現在市販されているドローンには、機体に搭載したカメラの映像を機体の操縦者の持つタブレットやスマートフォンに表⽰し、⾶⾏現場の地上局でこれを⾒ながら操縦することができるようになっているものがあります。しかしこのような映像配信には、多くの場合、2.4GHz帯や5GHz帯の無線が⽤いられているため、配信距離に制約がありました。
今回は弊社が開発したUAV通信プラットフォームとLTE網を利⽤することで、遠隔地を⾶⾏する機体に搭載したカメラの映像を、リアルタイムに遠隔制御拠点で確認しながら機体制御(着陸)をする事例を紹介いたします。[※1]
システム構成
今回ご紹介するシステムの構成を以下に⽰します。
システム構成図

主なシステム構成要素
構成要素 | 説明 |
---|---|
UAV通信プラットフォーム | 遠隔からUTM(管制システム)等を使って機体の管理、制御を行うメディエータとしての役割を担う弊社の製品です。MAVLink互換の機体をサポートしています。 |
シリアル・IP変換アプリ | 機体のフライトコントローラとUAV通信プラットフォームの相互通信を行うためのアプリケーションです。 |
機体操作用アプリ(テストプログラム) | UAV通信プラットフォームが提供する機体の飛行モード変更APIおよび機体の位置移動APIを呼び出すためのテスト用のアプリケーションです。弊社ではお客様のご利用シーンに合わせた開発を行うことも可能です。 |
VPNアプリ | VPN環境は必須ではありませんが、機体側のIPアドレス固定や機体と遠隔制御拠点間のP2P通信を実現するために利用しています。 |
手順
-
クラウドサーバでUAV通信プラットフォーム、VPNアプリを起動し、機体上のRaspberry Piでシリアル・IP変換アプリ、VPNアプリを起動します。さらに遠隔制御拠点の機体制御PCで機体操作⽤アプリ、VPNアプリを起動し、相互の通信を確⽴します。
今回の構成では機体はIPアドレスで識別しており、複数の機体を同時に管理することも可能です。 -
機体位置などのテレメトリ情報を確認するため、UAV通信プラットフォームのMAVLinkプロトコル中継機能により機体上のFC(フライトコントローラ)を、LTE網/インターネットを介して、遠隔制御拠点の機体制御⽤PC上の外部のGCS(今回はQGroundControl)と接続します。
UAV通信プラットフォームでは機体制御のためのコマンドをAPIとして提供しており、外部のUTMと接続することも可能[※2]です。 - 機体上のRaspberry Piで映像配信アプリを起動し、LTE網/インターネットを介して、遠隔制御拠点の機体制御⽤PCのブラウザで閲覧を開始します。今回は320x240px、15fpsとしていますが、LTE網の上りの通信速度が許す限り画質を上げることも可能です。
-
今回は機体をプロポ操作で離陸させ、⼀定⾼度まで到達したところで遠隔制御拠点の機体制御⽤PC上の機体操作⽤アプリにより、UAV通信プラットフォームのAPIによる機体制御モードに変更します。
ミッション⾶⾏の途中や終了後など任意のタイミングで、UAV通信プラットフォームのAPIによる機体制御モードに変更できますので、⼤まかな⾶⾏はミッション⾶⾏で実施し、機体位置の微調整を遠隔制御拠点にあるUAV通信プラットフォームのAPIを使った機体操作⽤アプリから⾏うことも可能です。リアルタイム配信映像とGCSでの表⽰イメージ(⾼度約20m) -
遠隔制御拠点の機体制御⽤PC上のブラウザに表⽰されるカメラ映像を⾒ながら機体操作⽤アプリを使って機体の位置を調整して、徐々に⾼度を下げてランディングパッドに着陸します。途中からミッション⾶⾏モードに変更して⾃動⾶⾏に戻すことも可能です。
なお、今回ご紹介した事例ではカメラを機体下部に固定した着陸に特化した機体での検証になっていますが、ジンバル搭載機であればカメラを進⾏⽅向に向けて常時機体の周囲を確認することが可能です。UAV通信プラットフォームではジンバルの遠隔制御のためのサーボコントロールAPIも提供しており、対応した機器の遠隔制御も可能です。
おわりに
2021年7⽉よりNTTドコモ社の「LTE上空利⽤プラン」が提供開始となり、今後LTE網を使った⽬視外⾶⾏のニーズがさらに⾼まると考えられます。弊社のUAV通信プラットフォームやドローン関連ソフト開発技術/ノウハウを基に、皆様のドローンビジネスをさらに発展させるお⼿伝いをしますので、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
参考動画
前述の⼿順で遠隔制御により着陸を⾏ったときに機体から撮影したカメラ動画です。しばらく上空まで機体を上昇させてランディングパッドから位置をずらした地点まで移動し、33秒くらいから遠隔制御拠点の機体制御⽤PC上のブラウザでカメラ映像を⾒ながら、機体操作⽤アプリでUAV通信プラットフォームのAPIを使って着陸位置を調整してランディングパッド上に着陸させています。
機体イメージ
今回の検証で利⽤した検証⽤機体です。今後は、ジンバル制御や⾼機能カメラを搭載した検証⽤機体での飛行も予定しております。

2021年7⽉ 執筆
- [※1] 本記事の実証実験では⾶⾏するエリアにパイロットと、機体制御PCを配置して実施しています
- [※2] 2021年7⽉時点ではUTMとして、株式会社トラジェクトリー社のTRJXとの連携を確認しています
紹介記事
UAV通信プラットフォーム Lab Letter
- vol.1 LTEドローンの遠隔機体制御と簡易映像配信(by UAV通信プラットフォーム)
- vol.2 VPNを使ったドローンとの暗号化通信とMAVLink2メッセージ署名による機体の乗っ取り防止(by UAV通信プラットフォーム)